流麗で美しい、幾何学的なフォルム。その影には難解な数式があります。この造形美は、鑑賞を目的したものでなく、難解な数式を目に見える形で立体化させたもの。これらの「数理模型」と呼ばれる教材は、19世紀後半からドイツで製作されていましたが、実は日本でも昭和初期より国産の数理模型が作られていました。その製作元の一つが大阪にある「加藤数物製作所」です。ドイツ製のものは石膏製でしたが、当時、木地師や建具師を多く抱えていた加藤数物製作所では、より強度が高く、重量も軽い木製にこだわり、その複雑な形状を木から削り出すというなんとも手のかかる独自の製法を採用。これにより、学生たちが手に持って観察のしやすい数理模型を実現しました。そんな加藤数物製作所に保管されていた数理模型と、加藤数物製作所による数理模型を多数収蔵している奈良女子大学のコレクションを撮影し、その造形の数学的意味を解説した書籍「Mathematical Models」を発売いたします。
奈良女子大学研究院の篠田 正人教授による数理模型の解説が収録された、和書ではおそらく初めてとなる数理模型のガイドブック。篠田教授によるわかりやすい解説とともに、写真家 山口 明氏による美しい写真がふんだんに使われたヴィジュアルブック的な側面も持ち、文系の方でも強く知的好奇心を揺さぶられる一冊です。
STRAIGHTが作るヴィジュアルブックシリーズの第一弾で、判型もB5版変形と大きくなり、フルカラー88Pと見ごたえも十分な仕様となっています。
〈著者〉
篠田 正人 Masato Shinoda
奈良女子大学研究院自然科学系教授。専攻は確率論、数理ゲームの解析。
奈良の地で数学女子の育成に携わり、すでに27年の月日が経っている。