JOURNAL

Wittmackia, the resurrected genus /Atsushi Sato

2017.05.17

2017年2月にDNA配列の解析に基づいてブロメリア亜科の一部が再分類された。ホヘンベルギア本HOHENBERGIA -Serrate Tanks-にも少し関係する内容のため、やや難しい内容ではあるがここで解説したい。ブロメリア亜科の系統分類については以前から問題が指摘されていた。同亜科を構成する中心的な属のほとんどが多系統群であり、さらにエクメア(Aechmea)属の位置づけが不明瞭なためである。エクメア属の種は系統樹上のあちこちに分散し、まとまった分岐群をなさないため、ごちゃ混ぜな属という意味でtrash-can genus(ゴミ箱属)とまで言われている。 このブロメリア亜科の系統樹にエクメア属、ホヘンベルギア(Hohenbergia)属、ローンベルギア(Ronnbergia)属から構成されるローンベルギア群団(Ronnbergia Alliance)と称される分岐群が存在する。DNA配列の解析により、この群団は中米南部から南米北西部に特異的に分布するエクメア属およびローンベルギア属から構成される太平洋群(Pacific clade)と、主にアトランティック・フォレストとカリブ海諸国に分布するエクメア属、ホヘンベルギア属およびローンベルギア属から構成される大西洋群(Atlantic clade)に分けられた。この解析結果などにより、太平洋群に属する26種がローンベルギア属に、大西洋群に属する44種がウィットマッキア(Wittmackia)属にそれぞれ統一された。DNA配列の解析結果がきれいに地理的分布を反映していたため、複数の属から構成されるそれぞれの分岐群がそれぞれ1属としてまとめられたのである。 例えばその美しい花序からオリヴァ-エステヴェのブロメリア本の表紙を飾ったエクメア・ドラキアーナ(A.drakeana)は太平洋群に属するため、ローンベルギア・ドラキアーナ(R.drakeana)となった。また、ここで解析されたホヘンベルギア属はすべてウィットマッキオプシス(Wittmackiopsis)亜属であり、大西洋群に属するため、そのままウィットマッキア属に属名が変更された。同属は長らくエクメア属のシノニムとされていたが、約60年ぶりにその名が復活したことになる。なお、その復活に際し、4種がシノニムとして整理された。 結果としてホヘンベルギア属からウィットマッキオプシス亜属が抜けたため、ホヘンベルギア属には従来のホヘンベルギア亜属の種だけが残った。 HOHENBERGIA -Serrate Tanks-の出版当時、ホヘンベルギア属内にウィットマッキオプシス亜属が存在したため、「正しくはホヘンベルギア亜属の専門書」と言い訳されていたが、この再分類により上掲書は名実とともにホヘンベルギア属の専門書となった。 最近はDNA配列に基づくブロメリアの分類変更が相次いでいる。前回のジャーナルではティランジア亜科の再分類について解説したが、その後、同亜科にさらにワルティリア(Waltillia)属が創設された。 今後も同様な手法による分類体系の見直しが続くと思われる。
文 : 佐藤 淳

参考文献
Aguirre-Santoro, J. et al. (2016) Molec. Phylogen. Evol. 100: 1-20.
Aguirre-Santoro, J. (2017) Plant Syst. Evol. 303: 615-640.Leme, E.M.C.